「音楽=ほぼ西洋音楽」になっている現代
日本人は歌が下手だとよくいわれます。まず、音程が悪い。そして、リズムが不明瞭。…と。
その理由を言語や生活習慣の違いに求め、研鑽を積んできましたが…。
国際的に活躍する人も多くなってきているので「日本における西洋音楽プレイヤーのトップ層」は国際水準になってきているのだと思いますが、なかなか音楽教育の末端とは事情が違うのかなと思います。
日本人が日本の民謡などを歌ったら、おそらく西洋音楽をやるよりも発声的には遥かにとっつきやすいのではないかとも思うのですが、「音楽の授業」についても、ピアノという西洋楽器で授業をして五線譜を使用しています。
授業で扱うものが昔は専ら西洋音楽だったのが、「それはおかしいのではないか?」という考えから民族音楽を取り入れたり…と今は少し変わりましたが、それでも教育の現場にあるものは西洋音楽です。そして、我々が普段耳にする音楽の殆ども西洋音楽を基本に発展した音楽ばかりです。
そもそも我々の文化で育った音楽とは音楽の成り立ち自体が違うんですよね。
西洋音楽はキリストの教会音楽を根っこにしています。教会で響き渡る歌声やハーモニー…が発展していったものです。日本人にはない文化です。
使用言語、風土、居住空間、コミュニケーション…あらゆるものに違いがある中で、西洋音楽を輸入してきて日本の義務教育に組み込みました。
そしてその西洋音楽の基準で評価した時に、文化が違う日本人の歌は下手だと評されやすいということですね。
…そもそも、外国の音楽をやっているのに下手だと言われるというこのフェアじゃない感。。…まぁ、そもそも支配するために宗教を利用したりしてきた白人の歴史がありますので、価値観を西洋に有利なように塗り替えるというのはよくあるやり口なんじゃないでしょうか(爆)
日本人の歌が「下手」な理由
どうも巷(ネット調べw)では、「欧米人は腹式呼吸で話して、日本人は胸式呼吸で話す。」…などと言われているようですが、そもそもどうして日本人が西洋音楽的な発声で歌うことを苦手としているのでしょうか?
大きな違いは普段使用している言語にあります。
電車などで、外人さんの声がやたらと大きく通って聞こえる…ということがよくありますが、腹式呼吸は使用している言語の特性によって生じる「結果」のひとつに過ぎません。
我々には子音と母音が分離した感覚が欠如していて、発声が「※のどにへばりついた音」になりやすいです(舌根に不必要な力みがある)。(※マリエッラ・デヴィーア女史が公開レッスンに来た時にもレッスン生に確かそのような表現をしてました。)
この「のどにへばりついた」声では腹式呼吸もへったくれもないのです。
子音と母音のタイミングの違いについては、合唱でも言われます。
「子音を先に触っておいて、離すだけにする」、「音符の前に子音を言う」などなど。
約10年前の段階で、合唱団でもそれに関係するワークショップなどでもそういったことはよく耳にしました。
…ですが、現実問題として合唱部などでも殆どそれが出来ていません。ほぼ「50音(子音と母音が同時発音)」です。
そもそも「出来ているか出来ていないかを判別出来る耳」を持っている人がまだ多くなく、「知ってる」からやってるつもりにはなってる人もたくさんいるという状況です(辛口)。
子音と母音に時差が無いとどうなるのか?
歌うときは声帯等を器楽的に扱いますが、子音と母音に時差がない場合、子音=空気の抵抗
母音=楽音(ピッチを成立させる楽器の音)
という本来は役割分担されている機能を別々に使えないということがおこります。
したがって、楽器の音になりません。
音程が悪くなります。そして、子音の機能を明確に使えないということはリズムも悪くなります。
日本人の歌は音程が悪くてリズム感が無いと言われる所以ですね。
また、50音で発音していると、いちいち声帯で空気のクラックが起こります。ヴァイオリンなどの擦弦楽器を想像していただけるとわかりやすいですが、弓と弦が途中で離れたり止まったりしたら、音も途切れますよね。それは歌でも同じです。これも楽音が美しく奏でられない大きな要因のひとつです。
「音楽」に対する美意識の違い
さて、今まで日本人が歌が下手だと言われる理由や、また改善の手助けになる原因などについても書いてまいりましたが、そもそも論として、西洋的な歌声の響きが日本人の好みにあうとは限らないという現実があります。合唱コンクールの審査結果やお客さんのウケをみていてもそうですが、特に「ピッチ」や「ハーモニー」に対する感覚は習慣によるところも大きく、「だいたいあっている方がいいけれど迫力がいい方がいい」という客層が存在します。
クラシック歌手に関して、「本場で活躍している」として逆輸入した時などはラベルの力もあって一般的に評価されやすくはあるのですが、身近なところのコンサートなどでは…
・西洋的な響きで歌っている歌手
・日本的な響きで歌っている歌手(若干全体的にピッチが低くて、演歌的な力みを少々伴った太めな声で歌う)
を並べた時に、日本人の好みの問題として後者の方が一般的に受け入れられやすいる部分があったりします(もちろん普段からどういう音楽を聴いているのかによるところが大きい)。
西洋楽器の演奏はピッチやハーモニーなどの統一感を成す「楽音」が一般的であるのに対し、和楽器の演奏は「噪音」に美意識を感じた演奏がたくさんあります。
(西洋音楽に触れる機会の少ない)日本人の感覚ではピッチやハーモニーに対する重要度がそこまで高くありません。
声とピアノのピッチが多少ズレていても、声の揺れ幅が大きくてハーモニーを形成してないように聴こえても、「朗々と、近くで聴くと立派にきこえる声」の方が好きな人はたくさんいる、そういう印象です。
客層によって作るものが違うのはどんなお店でもあることなので、結局は好みの問題…というところに落ち着いてしまうのですが…。
演奏する本人は確信犯でやれるといいですね!ということでまとめたいと思います!!