自分が忘れないために書くことが人の役に立つらしいので、こないだ「そうだなー」って思ったことを書いておこうと思います。
※前振り長め
私は小4の時に歌手になりたいと思い始めたんですが‥。
将来の夢はオペラ歌手ではなく…というか、オペラはおろかミュージカルの存在も知らず、演歌歌手になりたいと言ってました。
昔よく歌っていたのは、「夜桜お七」「津軽海峡・冬景色」「天城越え」「夫婦みち」「珍島物語」あたり。
…で、ザ・思春期な曲を聴くようになり、歌うようになり、なぜか声楽を勉強し始めて…ドハマりし、歌い続けて今。
なので、私個人はわりとなんでも歌います。
自分がそうなので、声楽をやっているみんなもなんでも歌うもんだと勝手に思っていたんですが、女性の場合はむしろそうでもないようで、「カラオケは好きじゃない」「ポップスはどう歌って良いのかわからない」「声楽で言われたことがポップスでは活かせない」という声をちらほら耳にし…。
そして、ポップス界隈の人も「ボイストレーニングで声楽の基礎を勉強しても歌がうまくなるわけではない」と言っている意見も耳にし…。
おそらくですが、「違いが何なのか?」が明確であり、演者本人に使い分けのできる技量があれば活かせることはたくさんあるのではないかなと仮定して、私なりに違いをまとめてみようかなと思います。
マイクを使用するかしないか
オペラとミュージカルの違いは、「マイクを使うか使わないか」だと言われています。
クラシック音楽は基本的にホールの反響を利用した「生の音(アコースティックな音)」を楽しむ音楽なので、「広い空間であっても拡声器を使わないで届く発声」ということになります。
マイクの役割を身体でやるかやらないか?ということですね。
一番決定的に違うのは、響く声かどうか?ということです。
マイクに近づいてささやくような歌唱法ではホールでは客席に届きません。
声楽の場合は「楽器として共鳴」してないとそもそも声が飛ばないので、共鳴腔を最大限活かした状態で歌いますが、マイクがある場合は共鳴していなくても機械が拡声してくれるので大丈夫。ということになります。
歌手によって歌い方は随分と違うのですが、ポップス歌手の場合は、母音によって&音の高さによって口の中(奥)が狭くなったり広くなったりする場合が多く、また総じて共鳴を「鼻腔共鳴」のみに頼っている傾向が強いかなと思います。
クラシックは母音によって空間の広さを変えません。変わるのは舌の位置だけです。笛の筒の大きさが変わらないのと同じですね。肉体をより生の楽器に近い扱いをするということです。
従って、「楽器の筒」となる部分を保つためにも子音と母音の機能が確実に分離していて、子音の処理をポップスよりもかなり早くやらなければ上手く歌えません。
これが大きな違いです。
…この点を理解していれば、歌い分けは可能だと思います。
もちろん普段の練習比重による「癖」はありますけど。
ミックスボイスのバランスの違い
全般的にポップスの方が息のスピードが早いことが多く、必然的に閉鎖が強くなり胸声(いわゆる地声)が強めになります。
ちなみにクラシックを歌っていても、息のスピードが早すぎる人・ブレスコントロールが不十分な人は必要以上に胸声が強くなってます。だいたい子音~母音への移行のテクニックが不十分で、空気のスピードのコントロールがうまくいっておらず、声帯への呼気圧が適当ではない状態になっています。
子音を発音する際に舌などが接触するタイミング、離すタイミングを的確に出来るようになるだけで格段にリズムの明瞭さは変わりますし、ブレスコントロールも変わります。それはジャンル問わず、歌唱力上達に必要なスキルです。
ただそのタイミングはジャンルによって、特に子音と母音の時差の程度に差があります。
支えの重要度の違い
よく合唱でも「支えが~」って言われますが、支えはむしろ、響きの焦点(声帯の適切な振動によって生まれる)がある程度明確になっていて、且つ、不適切な部位の筋肉の緊張等による共鳴腔への共鳴の阻害がない状態を保てるようになっていて、正しい姿勢で下腹部より腹圧が利用できる状態になっているときにようやっとコントロールが可能になってきます。
舌根がかたいときには感じようがありません(のどで支えてるので)。
連動している感覚が生まれるようになってから、初めて事前にどのような準備が必要なのか?が自分で考えてできるようになってきます。(腹圧をかけるタイミング等)
…全く何も知覚出来ていないのに「支えよう」と下半身ガチガチに力んでるのは支えではありません。
ピッチを正確に保つためには声帯の適切な運動方法を身につける必要があり、それはジャンルで大きな差異はありません。
ですが、ポップスではマイクが前提になっているので声帯の閉鎖具合(ささやき声の使用など)が異なったり、支えがそこまで必要とされない歌も多くあります。
その点、曲にもよりますが支えの重要度という点もポップスとクラシックの違いかもしれません。
ただ、いわゆる「実力派系の曲」はのどで支えているとそもそも歌えない曲が多いです。
テクニックの優先度が高く両方で大切なこと
トレーニングの優先度としては、「声帯の適切な振動をマスターすること(→響きが生まれる)」&「子音と母音を分離して機能を的確に分けて扱えるようになること」で、これはジャンルを問いません。
個人的に、これをきちんと指導している人だったら導入レベルとしては安心かなと思います。
逆に「もっとお腹から声を出して!」とかが一番最初のレッスンになっているところは、あんまりおすすめしません。
舌根の力みをとるために必要なことをすっ飛ばして結果を出せというのは非常に難儀なことです。
…と、ざっくりとポップスとクラシックの発声の違いなどについて書いてみました。